暮らしと音楽の「密」な関係。vol.12|夏になると聴きたくなるラテン・ミュージックってなに?

夏を目前にして、うだるような暑さとジメジメした雨模様が続く毎日。カラッと晴れた日には、海や山への旅行を考えている方も多いのではないでしょうか。

行動が活発になると、聴きたくなるのがノリの良い音楽。中でも「ラテン系」と呼ばれるサウンドは、盛り上がる楽曲の定番です。しかしこの「ラテン」、実際はなにを意味する言葉かご存知でしょうか?

これは1850年台に提唱された「アングロ(英語圏)」の対となる接頭語で、米大陸における「非英語圏」を表わします。つまり、アメリカとカナダを除く、キューバ、ブラジル、アルゼンチンなどの諸国を指すのです。これらの国々で演奏される楽曲、またはそのフィーリングを取り入れた音楽が、主に「ラテン・ミュージック」とされます。

おだやかなリズムとささやくような歌唱でしられるボサノバはブラジル発祥。これもまた広義のラテン・ミュージック。

その音楽性は、そこで暮らす人々の生活に直結しています。たとえばキューバ。海に囲まれた同国は、古くから海洋信仰が根付いており、燦々と降り注ぐ陽光の下、海産物の豊穣を海の神“ジェマヤ”に祈ります。その際に複数のパーカッションを鳴らし、ダンスを踊りながら神との意思疎通を試みるのです。

このように生活に根付いたリズムがそもそもダンサブルなものであったため、その国で奏でられる音楽もまた律動的なものになりました。その後、ジャズやポップスと結びついて流行曲になる例も多く見られるようになります。

もちろん、昔ながらの味わいを残すバンドも多くあります。たとえば1999年に公開され、世界中でヒットした映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」には、キューバのベテラン・ミュージシャンによる味わい深い演奏がたっぷり詰まっています。

ゆっくりしたテンポでじっくり歌い込むキューバン・ミュージックもまた一興。晴らすばかりではなく、暑さを噛み締めるのもまた夏の醍醐味ではないでしょうか。

大伴公一 | Koichi Otomo
(ミュージック・ソムリエ / 愛猫家)

立命館大学を卒業後、音楽専門誌ジャズライフの編集を経てブルーノート・ジャパン/モーション・ブルー・ヨコハマに勤務。2018年にはモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンのプロデューサーに就任。現在は文筆業の傍ら、ジャズ番組のナビゲーターや横濱ジャズプロムナードのプログラムディレクターも務めている。ミュージックソムリエ。

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