毎年2月、世界中の人々から注目されるイベントが北米で開催されます。ひとつは音楽の祭典・グラミー賞の発表。今年はコロナの影響で4月に延期となりましたが、ノミネートにはビリー・アイリッシュ、レディガガ&トニー・ベネットなどの名前が並び、期待感は高まります。そしてもうひとつのイベントが、スーパーボウルです。
スーパーボウルとは全米フットボールのプロリーグにおいて、その頂点決める注目の大会。1967年に初開催されて以降、アメリカ最大のスポーツ・イベントとして定着し。当日は事実上の祝日にあたるほど(通称“スーパーボウルサンデー”)。同番組の中継は、数あるテレビ番組の中でも最も高い視聴率を記録するなど、国を上げての行事であることがわかります
試合の行方はもちろん、試合のハーフタイムにおこなわれるパフォーマンスも超豪華。毎年さまざまなアーティストを招き、スポーツの幕間とは思えない本格的なコンサートを行うことで知られています。
その歴史が始まったのは1993年のこと。それまでは大学のマーチングバンドなどが出演していた舞台に、なんとマイケル・ジャクソンが出演。彼の登場でテレビの視聴率がうなぎのぼりになったことから、アーティストのコンサートを併せて開催することが定着します。
1993年のハーフタイムにはマイケル・ジャクソンが登場。当時の映像からは、スポーツとはまた異なる熱狂がうかがえる。
その後もエアロスミス(2001年)、ポール・マッカートニー(2005年)、レディー・ガガ(2017年)など、名だたるアーティストたちが登場してきました。
今年のスーパーボウルも2月13日にロサンゼルスで開催されましたが、このハーフタイム・イベントがすごいことになっていました。今年の出演者は、ドクター・ドレ、スヌープ・ドッグ、エミネム、メアリー・J.ブライジ、ケンドリック・ラマーというラインナップ。加えて50セント、アンダーソン・パークがゲストで参加するという夢の舞台が実現したのです。
そのステージは圧巻の一言。当日の映像は全世界200カ国以上で同時中継されたほか、動画サイトなどにも配信され大きな話題を呼んでいます。その再生数は、Youtubeだけでも3週間で7000万回再生ですから、どれだけの注目が集まっているかがお分かりいただけるでしょう。これまでの出演者はロック〜ポップス系が主なものでしたが、今年は初めてヒップホップが主役になりました。これは、アメリカン・ポップスの歴史が大きく動いた瞬間であったともいえるでしょう。
今年の会場となったSoFiスタジアムは、およそ70,000人のキャパシティ。当日の映像からは入場制限は行なわれず、ほぼ満席たったことがわかります。これだけ多くの人が注目するイベントですから経済効果も大きく、1日あたりにするとオリンピックを凌駕するものとさえいわれてます。それだけに観戦チケットも高騰し、今回は最安値でも5000ドル以上。VIP席は10万ドル、特等席は……なんと90万ドル! 日本円にして1億円以上という超高価格となりました。
現代の北米を代表するイベントではありますが、現実的に考えると一番の特等席は自宅のテレビ前……でしょうか。
text by Koichi Otomo
【筆者プロフィール】
大伴公一 | Koichi Otomo
(ミュージック・ソムリエ / 愛猫家)
立命館大学を卒業後、音楽専門誌ジャズライフの編集を経てブルーノート・ジャパン/モーション・ブルー・ヨコハマに勤務。2018年にはモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンのプロデューサーに就任。現在は文筆業の傍ら、ジャズ番組のナビゲーターや横濱ジャズプロムナードのプログラムディレクターも務めている。ミュージックソムリエ。