暮らしと音楽の「密」な関係。vol.1 – リズムを意識した選曲 –

暮らしと音楽の「密」な関係①

たとえば恋人と食事に行き、入ったレストランでデスメタルが流れていたらどうなるだろう? よほどのことがない限り、きっとその日の食事は険悪なムードになるに違いない。

人が音楽を認知するとき、まずはリズムを感じてから、音色やメロディ、ハーモニーといった細部を知覚する。そのため、音楽がBGM(バックグラウンド・ミュージック)たり得るには、リズムが日常を邪魔しないことが重要になる。

では日常を邪魔しないリズム、とはなにか。

たとえばクラブやディスコを想像してほしい。音楽に乗せて体を揺らすという行為を誘発するためには、律動を感じやすい音楽が必要だ。律動の強い音楽は身体的な運動意欲につながりやすいため、リラックスとは逆の作用をもたらすことになる。つまり、落ち着いて食事やお酒を楽しむのであれば、ある程度ビートの抑えられた音楽をセレクトすると良い。


けれどクラシック音楽だと格式が高くなり過ぎて……というときに好んで聴かれるのがジャズやボサ・ノヴァだ。このジャンルはヴォーカルがいない編成も多いため意識が歌詞に流されず、メロディカルなのでリラックスした雰囲気を作るには持ってこいというわけだ。



これは家で過ごす時間にも同じことがいえる。会社へ行く前と、休日の朝では気持ちが異なるように、日常を彩る音楽もまたあなたの気分によって変わってくるだろう。お酒を飲むにしても、ワイン、ビール、ウイスキー、それぞれでしっくりくる音楽があるはずだ。それを意識して音楽をチョイスすれば、日々の彩りはより豊かなものになるはずだ。もちろん最大公約数的な話になるので「私は泡盛とデスメタルの組み合わせで酩酊するのが大好きだ!」という人がいても構わないのだけれど。

ここではそんな日常と音楽のマリアージュについて、少しずつ話をしていこう。

text by Koichi Otomo


【筆者プロフィール】

大伴公一 | Koichi Otomo(ミュージック・ソムリエ / 愛猫家)

立命館大学を卒業後、音楽専門誌ジャズライフの編集を経てブルーノート・ジャパン/モーション・ブルー・ヨコハマに勤務。2018年にはモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンのプロデューサーに就任。現在は文筆業の傍ら、ジャズ番組のナビゲーターや横濱ジャズプロムナードのプログラムディレクターも務めている。ミュージックソムリエ。

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