暮らしと音楽の「密」な関係。vol.13|最新作「ソフトリー」が話題、山下達郎の名作をジャズの視点で聴く!?

6月末に山下達郎さんニュー・アルバム「ソフトリー」がリリースされました。オリジナル作品としては前作「レイ・オブ・ホープ」からなんと11年ぶり。日本中が待望した1枚といえるのではないでしょうか。

山下達郎『ソフトリー』公式トレーラー

リリースに伴い、山下さん自身が様々な媒体に露出がありましたが、「サブスクリプションには参加しない」と明言するなど、山下さんらしいこだわりはご健在。こだわり尽くした新作のサウンドはどれも鮮烈で、久々に打ちのめされた方も多かったのではないでしょうか。

その活動を振り返ると、歌謡曲からジャパニーズ・ポップスへと移り変わる時期の原風景をリードしたミュージシャンのひとりだといえるでしょう。

最新アルバムからMV化された「LOVE’S ON FIRE」。ならではのサウンドを奏でながら、最新の音づかいにも気を払った現在進行形のポップス。

山下さんのことをさほど知らない方でも、その音には一度は触れたことがあるはず。「クリスマス・イヴ」とは言わず、たとえば「LOVELAND, ISLAND」。シングル・リリース以前にビールのCMソングに起用されていたので(1981年)、ある年齢以上の方であればさわやかな夏の景色を想起される方も多いでしょう。

https://www.youtube.com/watch?v=ZoSgtbISUYs

この「LOVELAND, ISLAND」のレコーディングには青山純(ds)、伊藤広規(b)、難波弘之(key)という山下さんのサウンドを支えたレギュラー・トリオに加え、浜口茂外也(perc)や土岐英史(as)も参加(敬称略)。どなたも当時からすぐれたスタジオ・ミュージシャンとして活躍されていましたが、難波さんはテクニカル・フュージョン・バンドとして知られる“野獣王国”、青山さんはT-SQUAREやプリズムといったバンドの作品に多く参加。土岐英史さんはソロでも多くのアルバムを残していたジャズ・プレイヤーでした。

https://www.youtube.com/watch?v=iE-IugaVtXg
難波弘之(key)、是方博邦(g)、小森啓資(ds)、鳴瀬喜博(b)からなる“野獣王国”
2021年に惜しまれつつも亡くなった土岐英史。晩年に岡本太郎のアトリエで。

この他にも山下達郎さんのアルバムには岡沢章(b)、松木恒秀(g)、村上ポンタ秀一(ds)などなど、時代を築いてきたスタジオ〜ジャズ系の名手が多く参加しています。近年に目を向けても、山下作品に参加しているサックス奏者の宮里陽太は、この夏に最新アルバムを発表。実にストレートなジャズ作品に仕上がっています。

このように、彼の作品をミュージシャンで切り取ってみると、また新しい聴き方ができるのではないでしょうか。興味がわいたら、Jポップを支えてきた名手たちによるジャズ・サウンドもぜひ聴いてみてください。

大伴公一 | Koichi Otomo
(ミュージック・ソムリエ / 愛猫家)

立命館大学を卒業後、音楽専門誌ジャズライフの編集を経てブルーノート・ジャパン/モーション・ブルー・ヨコハマに勤務。2018年にはモントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパンのプロデューサーに就任。現在は文筆業の傍ら、ジャズ番組のナビゲーターや横濱ジャズプロムナードのプログラムディレクターも務めている。ミュージックソムリエ。

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