新築に比べて選択肢が多く、価格的にも手頃感のある中古マンション。コロナ以降の生活変化や価値観の多様化もあり、人気上昇が続いています。しかし選択肢の多さは購入者にとってメリットである反面、築年数や価格、状態などが全く異なるあまたの物件の中から、自身のニーズに合ったものを細かく見極めなくてはならない、という大変さにもつながります。
初めて購入されるという方は「何を優先すべき?」「この判断で正解なの?」と不安になることも多いのではないでしょうか。
今回は、中古マンション選びの注意点を「立地」「築年数」「管理状況」の項目別にまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。
選び始めるその前に
物件検索サイトや不動産情報誌を開く前に、まずご自身やご家族の「住まいの条件」を決めておきましょう。前述しましたが、中古マンションは物件数が豊富にあります。譲れないポイントをしっかり認識しておかないと、思わぬ方向に迷走してしまうことも。逆に、条件をキッチリ絞り込みすぎても選択肢が狭まってしまう恐れがあるので、「住まいの条件」を決める際に優先順位を設定するとよいでしょう。
「住まいの条件」とは
①くらしのイメージ
「快適さや利便性を重視」「夫婦でテレワーク可能な家」「友人たちと交流が楽しめる生活」「環境が整った大規模マンションで子育てしたい」などなど、どのように暮らしたいのかをイメージしておく。バリアフリーやペット可などの必須条件も洗い出しておく。
②大まかなエリア
職場や学校、実家の近く。駅近、現在の生活圏内などなど、エリアを決める際に優先する条件を決めておく。
③大まかな広さや間取り
家族構成や必要条件、くらしのイメージから、必要な広さや間取りを算出する。間取りについても、優先順位をつけておくとよい。
④大まかな予算
自身や家族の収入支出、貯蓄額などを把握し、マンション購入予算をイメージしておく。
一般的に、「マンション購入費用は年収の5倍以内」が比較的安全と言われる。また貯蓄金額によっても、支払える頭金やローンの契約年数が変わってくる。リノベーションを検討している場合は、リノベ予算も忘れずにカウントしておく。
※マンション購入費用とは、マンション購入金額+購入に伴う諸費用まで含まれる。
上記の「住まいの条件」がイメージできたら、いよいよ物件を探しはじめます。
まずは「立地」
ご自身の「住まいの条件」に当てはまるエリアの中から、下記ポイントに留意しつつ、さらに絞り込みます。
「立地」の見極めポイント
①生活のしやすさ
通勤通学の利便性、日々の買い物や銀行、役所、病院といった生活インフラが生活圏内にあるか、お子さんがいる場合子育てに適しているかなどを確認。自身や家族が無理なく生活できるかどうかを検討する。
②防犯・防災
候補のマンションの周辺環境をチェック。道の見通しはよいか、夜間の街灯は整備されているかなどを確認する。エリアや地区全体の環境チェックも大切。各都道府県警の犯罪発生マップなどを参考に、周辺の治安の良し悪しを確認しておく。また、国土交通省のハザードマップなどを参考に、地震や水害など自然災害に関するエリア情報も調べておきたい。
③資産価値
転勤や子どもの独立といった生活の変化に伴い、将来的に購入したマンションを売ることも起こりうる。大きく損をしないためにも、「資産価値が下がりにくい」「需要が落ちにくい」立地条件を意識しておきたい。都心部へのアクセスの良さや駅からの距離といった利便性は、売る際にもっとも重要視されるポイント。その他、エリアの雰囲気や暮らしやすさ、ネームバリューなども重視される。
やっぱり気になる「築年数」
中古マンションで、もっとも気になるのが「築年数」かもしれません。建物や設備の老朽化が気になって、「少しでも新しい物件を」と思いがちですが、実は築古物件にもおいしいポイントがたくさんあります。
鉄筋コンクリート(RC造)マンションの寿命は、100年とも言われています。築浅だけにこだわらず、いろいろな角度から検討してみてください。
「築年数」の見極めポイント
①築20~25年の特徴
中古マンションの価格は、築20~25年目で底値を迎えると言われる。物件によるが、新築時に比べて6割以下になることも多く、価格面でかなりお買い得感がある。リノベーションにも向いている。また古い物件ほど好立地であることが多いのもメリット。
そもそも底値で購入するため、買い替えの際に値崩れする可能性も低く、資産価値の面から見ても優秀と言えそう。ただし建物や設備の老朽化は否めず、設備交換などで費用が掛かるケースも多い。建物の管理状況、水回りや配管などの設備状況、大規模修繕計画などをしっかり確認する必要がある。
②築10~20年未満の特徴
新築時の価格の7割前後で取引されることが多く、手頃感から安定的に人気がある。
2000年代は、住宅に関わる法整備が実施された時期。そのため、この時期に建てられたマンションは、床暖房や換気システムを完備するなど、一年代前に比べて住宅性能がアップしているものが多い。建築技術の向上もあり、建物の外観も劣化を感じさせないものが多い。
もちろん年数分の経年劣化は進んでいるため、管理状況の確認は必須。マンションによっては、メンテナンス費用が掛かるケースも多い。マンション全体の大規模修繕が完了していれば、適切な修繕が行われたかなど管理状況の良し悪しが目視できる。
③築10年以内の特徴
建物や設備などにさほど古さを感じないため、大規模なリフォームが不要になることも多い。また、防犯設備や断熱性能といった機能面もある程度揃っているものが多いため不便さを感じにくく、一番人気がある年代。
ただし、価格面の手頃感は少ない。一般的に、築5年目までは新築時の9割程度、築6~10年で8~9割程度の価格で取引されることが多いとされる。またマンション全体の大規模修繕が未実施のため、購入後に大幅な修繕費用が必要となるケースもあり、確認が必要。
④耐震基準を知っておく
耐震基準における「新耐震基準」とは、約40年前の1981年6月に改正された建築法。「震度6~7で倒壊しないこと」などを定めている。実施年月以降に建築確認を受けたマンションであれば、ほぼ新耐震に当てはまる。
それ以前の「旧耐震基準」では、「震度5程度で倒壊しないこと」と定めている。とはいえ、旧耐震時代の建物であっても、堅牢な立地に建つ物件や、メンテナンスの際に耐震リフォームを実施している物件も多い。築40年頃の築古物件であっても、一概に「新耐震以前=地震に弱い」というわけではないので覚えておきたい。
ただし、築25年 (木造の場合は20年)を超えるマンションの場合、定められた耐震基準を満たしていないと住宅ローン控除が受けられないケースがあるので注意が必要。
「管理状況」の確認は必須
不動産サイトや雑誌などで、「中古マンションは管理を買いなさい」という言葉を目にしたことはありませんか。これは、マンションが管理会社によって適切に管理されているか否かが、マンションの寿命を左右するため。共有部分の清掃はもちろん、建物や設備のメンテナンス、エレベーターや火災報知機の点検などを怠り問題を放置すると、10年後20年後の建物の安全性や資産価値を大きく損なってしまいます。
検討中のマンションを訪れる際には、部屋内部だけでなく、建物や共有部分、管理会社の体制についてもしっかりチェックしましょう。
「管理状況」の見極めポイント
①管理会社への確認
マンションの管理方式が「自主管理」「全面委託」「部分委託」のいずれに該当するかを確認し、毎月支払う「管理費」が妥当な価格か調べる。「修繕積立金」についても確認しておく。
また、管理会社に「長期修繕計画」や「修繕積立金の収支」といった資料を開示してもらい、きちんと計画実行されているかを見ておく。特に、修繕積立金が足りないと建物に必要な修繕が行えず、劣化を放置することになるため、入居者からの徴収が滞っていないかも見ておきたい。
管理組合と管理会社がどのように運営しているのか、過去にどのような事案が起こったのかなどが気になる方は、マンションによっては管理組合理事会の議事録などを見せてもらえるケースもある。
またリノベーションを希望する場合は、管理規約を確認し、可能なこと不可能なことをきちんと把握しておく必要がある。
②共有部分を確認
エントランスやエレベーター内、廊下や階段などが清掃されているか、メールボックスにチラシなどが放置されていないか、ゴミ置き場がきちんと分別されているか、自転車置き場が荒れていないかなどを確認する。
建物外壁、ベランダの塗装剥がれやひび割れ、鉄柵のサビの有無なども見ておく。
以上、中古マンション購入のポイントについて、「立地」「築年数」「管理状況」の側面からご紹介しました。このほかにも見極めるポイントはいろいろありますが、まずはこの三点を重点的にチェックしてみてください。
確認すべき項目が多岐にわたり、複雑な点も多い中古マンション購入。難しいなと感じたら、不動産会社やコーディネーターなど専門家のアドバイスも上手に利用しつつ、ぜひ理想の住まいを見つけてください。